The Man Behind the Mask
なぜ、顔を出さないのか。
その答えは、プロフィールに書いた一行から始まった。
— ふたりの応援から。
銀座で、女性専門の美容整体を営んでいた。
顔を出したくなくて、ホームページも持たず、口コミだけでやってきた。
SNSは、連絡のためだけに。
コロナ禍。
サロンに通ってくれていた男女ふたりのタレントが、外出自粛要請で来られなくなった。
彼らから「17LIVEで配信している」と聞いて、アプリを入れた。
ただ応援してあげたかった。
— 配信の世界を、知っていく。
ふたりを応援しているうちに、他にも多くのライバーがいることを知った。
いろんな配信を覗いては、その熱量を眺めていた。
プロフィールには、こう書いていた。
「銀座で、小顔の施術をしています。」
— ひとつの依頼から、すべてが動き始める。
あるライバーが「施術を受けたい」とサロンに来た。
そして、こう言った。
「ここで、小顔のライブ配信をしたい。」
少し考えて、答えた。
「自分の顔を映さなければ、いいよ。」
画面の中で、彼女の顔が変わっていく。
その配信を見ていた別のライバーたちから、
「画面越しでもわかる。私もやりたい。」
そういうコメントが増えていった。
— マスクを、つくる。
どうせやるなら、銀座の女性専門の美容整体師がマスクマンだったら面白い。
世の中の常識を、ひとつ壊してみようと思った。
大好きだったプロレスラーのマスクを作っている老舗のマスク屋に、アポなしで向かった。
「女性専門の美容整体をやっていて、配信のためにあのレスラーのマスクを被りたい」と伝えた。
最初は、「どういうこと?女性専門なんだよね?」と困った顔をされた。
けれど、昔のプロレスの話や、そのレスラーへの思いを話していくうちに、面白がってくれた。
— それから、少しずつ。
マスクを被った施術家。
女性専門の美容整体。
声と、手だけで、画面の向こうに変化を届けていく。
声のファンも、増えていった。
噂は、配信者のあいだを渡っていった。
「銀座に、顔を出さない施術家がいる。」
北海道から、沖縄から、海外から。
これまでに施術した配信者は、200人を超えた。
— そして、今。
マスクは、もう選択ではない。
この手で応えてきた、時間そのものになった。
顔を出さないまま、ここまで来た。
これからも、そうあり続ける。
選ばれる理由は、手の中にある。